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近年、国家知識産権局は実用新案分割出願の審査において厳しい基準を採用しており、分割出願の請求の範囲と元出願の請求の範囲が「同一の発明構想」に属する場合には、通常、「分割出願が未提出とみなす通知書」を直接発行し、審査を断る。北京知的財産権法院は、係る判例においても該当処理方式を採用した。
しかしながら、2025年2月17日に「中国裁判文書ネット」(中国最高人民法院が管理する裁判文書公表専門サイト)に掲載された(2023)最高法知行終382号判決において、最高人民法院は、実用新案分割出願に対して「分割出願が未提出とみなす通知書」を直接発行して審査を拒絶する処理方式は、出願人の意見陳述及び補正の権利を剥奪してしまうと明確に指摘した。この判決は、実用新案分割出願の審査基準及び出願人の権利保障にとって重要な意義がある。
案件の回顧
専利法実施細則第四十二条第1項(訂正後細則第四十九条第一項)の規定によると、一つの専利出願に二つ以上の発明、実用新案又は意匠が含まれる場合、出願人は規定された期限が満了する前に、国務院専利行政部門に分割出願を提出することが出来る。
国家知識産権局の解釈によると、専利法実施細則第四十二条第1項における「二つ以上の発明、実用新案」とは、「同一の発明構想に属さない二つ以上の発明、実用新案」を指す。
実用新案分割出願の請求の範囲と元出願の請求の範囲の実質的差異が比較的小さい場合、実質的構造が同様で記述のみ異なる場合、又はその差異が単に通常の技術手段である場合、国家知識産権局は、通常、専利法実施細則第四十二条第1項の規定に合致しないと判断し、「分割出願が未提出とみなす通知書」を発行して審査を拒絶する。出願人は、救済方法として、行政復議又は行政訴訟を通じて当該通知書の取消しを申請することしかできない。
係争実用新案の案件紹介
2020年10月11日、深圳市A社は、既に専利権が付与された実用新案(出願番号202020388607.2、出願日2020年3月7日)に基づき、分割出願(出願番号202022320676.2)を提出した。
国家知識産権局は、「親出願の請求の範囲と分割出願の請求の範囲との相違点は当分野で通常の技術手段に属するため、分割出願が保護しようとする技術案は親出願が保護しようとする技術案に対して二つ又は二つ以上の独立した異なる発明創造を構成するには不十分である」ため、専利法実施細則第四十二条の規定に合致しないことを理由として、「分割出願が未提出とみなす通知書」を直接に発行した。
出願人は不服して、相次いで国家知識産権局と一審法院に行政復議と行政訴訟を提出したが、国家知識産権局の行政復議部門と一審法院はいずれも上記行政決定を維持した。
出願人は一審判決に不服して、最高人民法院に控訴した。その結果、最高人民法院は一審判決と復議決定を取り消し、国家知識産権局に再度審査することを要求した。
最高人民法院の観点
「専利審査指南」の分割出願の審査処理に関する規定によると、国家知識産権局は、分割出願の審査において、当該分割出願の出願日、出願番号等の形式要件が法律の規定に合致しない場合、未提出とみなす通知書又は取下げとみなす通知書を発行する方式で分割出願に対して処理を行う。また、分割出願が専利法実施細則第四十二条及び第四十三条の規定に合致しないと判断された場合、当該分割出願を却下する方式で処理しなければならない。
ヒアリング原則に基づき、審査官は、却下決定を下す前に、却下の根拠になる事実や理由及び証拠に対する意見陳述及び/又は出願書類を補正する機会を出願人に少なくとも1回与えなければならない。上記の規定によると、本願において、国家知識産権局は係争分割出願が専利法実施細則第四十二条に規定された分割出願の条件に合致しないと判断する場合、当該分割出願を却下する方式で処理を行うとともに、出願人に意見陳述及び/又は出願書類を補正する機会を与えるべきである。国家知識産権局は当該分割出願を却下する方式で処理を行ったことではなく、分割出願が未提出とみなす通知書をA社に直接発行したため、ヒアリング原則に違反した。
したがって、本願においては、当該分割出願を却下する方式で処理を行うとともに、出願人に少なくとも意見陳述及び/又は出願書類を補正する機会を与えるべきである。
分割出願の後続登録状況
該当分割出願は、いずれの審査意見通知書も発行されずに2024年11月11日に直接登録された。
この判決書には、親出願が実用新案専利権を既に取得したと提示したが、親出願に関連する登録情報について何も調べられないため、権利付与通知書が発行された後、登録手続きを行っていない可能性があると推測する。
本願の意義
最高人民法院は、本願において、国家知識産権局の分割審査手続の誤った処理方法を提示し、専利法実施細則第四十二条の規定に合致しない実用新案分割出願について、「却下ルート」で処理しなければならないことを明確に要求して、出願人の意見陳述と補正の権利を保障し、出願人の手続救済の機会を確保した。
しかしながら、最高人民法院は、当該判決において、「二つ以上の発明、実用新案」の実体認定基準について新たな解釈をしていないため、国家知識産権局の実体認定基準を変更したことではない。
コメント
既に提出された実用新案分割出願について、「分割出願が未提出とみなす通知書」を受領した場合、積極的に行政復議と行政訴訟を提出し、本願の判決を援用することにより、上記通知書を取り消して審査手続に戻ることができる。
一方、出願人が実用新案について分割出願を提出する場合、分割出願の請求の範囲に、なるべく親出願と実質的に異なる技術案を限定しなければならない。もちろん、このような実質的に異なる技術案は、出願当初から明細書に記載されて、補正の根拠となるべきである。