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先使用権は専利法における重要な制度であり、他人の専利の出願日前に、独立して実施し又は実施に必要な準備を整えた主体を保護して、元の範囲内で関連技術を引き続き使用することは専利侵害を構成しないと判断する制度である。
その中、「元の範囲」の証明は先使用権抗弁において避けられない問題であり、「専利法」又は「司法解釈」には、具体的にどのような証拠を挙げて「元の範囲」を証明すべきか、について記載していない。
以下、関連する司法判例を纏めて、最高法院が「元の範囲」を認定する際の考慮要素を分析し、先使用権者に参考として提供する。
一、司法判例
1、「元の範囲」が「既存の生産規模」であるか
最高法院の(2023)最高法知民終1106号判決において、最高法院は、「先使用権抗弁における元の範囲とは、先使用権者が元の生産規模の範囲内で専利技術案を引き続き実施することしかできず、無断で工場を拡張したり、生産設備を増加したり、他人に使用を譲渡又は許諾したりしてはならないことを指す」と判断した。また、最高法院は、既存の生産規模と生産能力は同等ではなく、生産設備に対する投資の証拠がない限り、生産能力が増加したとしても、既存設備が達成可能な最大生産能力の範囲内であれば、一般的には元の範囲に属すると判断した。
2、「企業信用情報公示報告」の情報は、「元の範囲」の証拠として利用できる
最高法院の(2021)最高法知民終1524号判決において、最高法院は、「元の範囲」とは、専利出願日前に既存の生産規模及び既存の生産設備又は生産準備を利用して達成できる生産規模を指すと強調し、一般的に、生産主体の住所、登録資本金及び経営範囲等に変化が生じていない場合、製造規模が拡大する可能性は低いと考えられると判断した。被疑侵害者が提出した「企業信用情報公示報告」によると、被疑侵害者が成立してから本件の一審の立件時まで、その登録資本金、住所、経営範囲及び高級管理職はいずれも変更が生じておらず、専利権者も実際に被疑侵害者の生産規模が既存の範囲を超えていることを証明できる証拠を提供していないため、被疑侵害者が本件の一審立件日までに元の範囲内で関連製品を製造していると認定することができると判断した。
実務上、上述の「企業信用情報公示報告」は「国家企業信用情報公示システム」で照会することができる。
3、専利出願日前の購入/販売契約は、「元の範囲」の証拠として利用できる
最高法院の(2020)最高法知民終642号判決において、被疑侵害者は係争製品を委託加工する形で製造し、かつ専利出願日前に被委託者と締結した複数の購入/販売契約を提供して、被委託者が大量製造能力を備えていることを十分に証明しているため、被疑侵害者の特許出願日以降の製造行為は元の範囲を超えていないと判決した。
上記の判決には、被委託者が大量製造能力を備えているため、被疑侵害者の製造行為が元の範囲を超えていないと判決したが、購入した製品数量や被委託者が変更された場合、結論が変わるかについて記載されていない。しかし、少なくとも、出願日前の購入/販売契約が、ある程度「元の範囲」の証拠として利用できることはわかる。
4、公文書で認定した事実を「元の範囲」の証拠として利用できる
最高法院の(2021)最高法知民終2158号判決において、被疑侵害者は専利出願日前に第三者会社とかかる製品の購入契約書を締結したことがあり、かつ係争専利に対して無効審判請求を提起したことがあり、無効審判決定書において、復審委員会は被疑侵害者のかかる製品は特定のクライアント(第三者会社)にしか供給されていなく、公開販売されないと認定した。最高法院は、無効審判決定書により、被疑侵害者が初歩的な立証責任を尽くしたと認定し、専利権者が元の範囲を超えていることを証明する反証を提供できなかったため、被疑侵害者の行為が「元の範囲」を超えていないと認定した。
5、本社と支社は先使用権の「元の範囲」を共有する
広東省高級人民法院の(2020)民終 276 号判決において、被疑侵害者は支社であり、被疑侵害者はその本社が先使用権を有することを証明した。第二審法院は、本社が先使用権を有する場合、支社である被疑侵害者は、本社の元の範囲内で係争製品を引き続き販売し、販売を承諾する権利を有すると判断した。
筆者は、支社は本社の支店として独立した法人資格を持っていないから、上記の判決があったと考えている。被疑侵害者が独立した法人、例えば本社の子会社である場合、本社が先使用権を有しても、子会社は独立した法人として本社の先使用権を享有することができない。
二、まとめ
上述の判例から、法院が先使用権の「元の範囲」を判断する時、以下の要素を考慮し、先使用権者は以下の要素を巡って証拠収集に着手することができる。
1. 元の生産規模、例えば工場、生産設備の最大生産能力、譲渡又は使用許諾の範囲。これらの証拠は、タイムスタンプや公証などにより、リアルタイムで証拠保全を行うことが望ましい。
2. 「企業信用情報公示報告」は、登録資本金、住所、経営範囲の証明に用いることができ、専利権者に反証がない限り、「元の生産規模」の証拠として利用することができる。
3. 被疑侵害者が他人に委託して製品を製造した場合、出願日前に締結された購入/販売契約は、ある程度「元の範囲」の証拠として利用することができる。
4. 出願日前に、製造、販売又は使用の「範囲」に関する内容が公文書に記載されている場合には、その公文書を「元の範囲」の証拠とすることができる。
5. 本社が先使用権を有する場合、支社は元の範囲内で先使用権を共有することができる。
以上のように、侵害訴訟において、先使用権の「元の範囲」を証明する必要がある場合には、上記の証拠収集に着手することにより、先用権者は「元の範囲を超えていない」ことをよりよく証明することができ、先用権抗弁の効率と成功率を高めることができる。