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典型的な判例 - 専利侵害紛争における製造行為の認定について

前書き

専利侵害を判定する際には、被疑侵害製品が専利権の保護範囲に入るか否かを確認し、侵害製品の製造、販売、承諾販売、使用、輸入等の侵害行為が存在するか否かを確認しなければならない。しかしながら、侵害製品の製造行為が存在することを証明するためには、通常、侵害製品、侵害製品の製造金型等の実物証拠が必要であるが、以下の最高裁の判例は、いかなる実物証拠もない状況で、侵害者がECプラットフォームで提供した宣伝情報に基づき、被疑侵害製品が専利権の保護範囲に入ると判定し、製造行為が存在すると推定した。


案件の紹介

A会社(イタリア会社)は専利番号が02829511.0で、名称が「石の破砕・スクリーニング用のスクープ」の特許専利(以下、係る専利と称する)の専利権者である。

2019年10月、A会社はB会社に専利製品を2台販売し、1年間の代理販売契約を締結した。2020年、B会社は当該2台の専利製品を第三者に販売した。

A会社は「愛采購」、「材料ネット」、「捜了ネット」などのECプラットフォームでB会社がかかる製品を販売していることを見つけ、B会社が製造、販売、許諾販売している製品は専利保護範囲に入ると判断し、済南市中級人民法院に訴訟を提起した。

一審法院は2022年4月28日に「(2021)魯01知民初931号」の一審民事判決を下し、A会社が被疑侵害製品を購入する能力があるにもかかわらず、製品を購入せず、B会社がネット上に載せた製品の写真と在庫量及び記載した作動原理のみに基づいて侵害を訴えたが、これは被疑侵害製品の技術案が係争専利権の保護範囲に入ることを証明できず、B会社の製造行為も証明できないため、A会社の訴訟請求を却下した。A会社は一審判決に不服し、最高裁に控訴した。

最高裁は2023年8月31日に「(2022)最高法知民終2021号」民事判決を下し、一審法院の判決を取り消し、B会社が損害賠償90万元、合理的な費用2000元を支払うように判決した。


二審争点

本件の二審争点は以下のとおりである。

1)B会社が被疑侵害製品を製造、販売、許諾販売しているか。

2)被疑侵害製品の技術案がかかる専利の保護範囲に入るか。


二審の認定

本件において、A会社はB会社が9つの被疑侵害製品を製造し、「愛采購」、「材料ネット」、「捜了ネット」(ECプラットフォーム)で販売、許諾販売していると主張した。その中の五つの被疑侵害製品に関し、ホームページにそれぞれ製品写真と作動原理が載せられており、B会社は当該写真はかかる専利製品の写真であり、作用原理は専利製品の使用案内の内容で、係る製品の技術案と一致することを認めた。

同時に、上記の五つの被疑侵害製品の販売ホームページには、B会社のブランド名や、B会社の製造地や、「メーカー直販」の文字や、お見積りや、在庫量などの情報が載せられ、B会社がネット上に載せられた製品の販売意思表示を認定することができ、当該製品の許諾販売行為を構成する。これにより、上記の五つの被疑侵害製品の技術案はかかる専利権の保護範囲に入ると認定できる。

B会社は上述の許諾販売行為の対象物は、その前に購買した2台の専利製品であると主張して、許諾販売の侵害行為を構成しないと主張した。しかし、上述の五つの被疑侵害製品の販売ホームページに記載された情報によると、ブランドがB会社のブランで、製造地もB会社がある地域で、在庫量は数百台であって、これはB会社が購買した「100%イタリア輸入」、「MBブランド」などの専利製品の実際の情報と矛盾し、B会社が購買した2台の製品はすでに2020年に販売済みの事実とも合致しないため、この主張は支持できない。

同じく、複数のECプラットフォームで上述の五つの被疑侵害製品を許諾販売し、ホームページにある製造地、在庫量、複数の製品写真、及び「メーカー直販」、「特注可能」などの内容を総合的に考慮すると、B会社が当該五つの被疑侵害製品の製造行為があると合理的に推定できる。販売行為については、A会社はB会社が実際に被疑侵害製品を販売していることを立証していなかったため、A会社の主張を支持できない。

一方、B会社は、「愛采購」、「材料ネット」、「捜了ネット」において、被疑侵害製品に対して記載した内容が偽情報であり、製品宣伝の目的ででっち上げただけであると主張したが、これは「中華人民共和国電子商取引法」第17条の規定に違反し、特に専利侵害主張に直面した際に、法的責任を回避するための口実となってはならないため、この抗弁主張を支持しない。

以上により、B会社が製造し、かつECプラットフォームで許諾販売した上記の五つの被疑侵害製品の技術案はかかる専利権の保護範囲に入り、B会社の製造、許諾販売行為は専利権に対する侵害を構成する。


コメント

専利侵害紛争において、被疑製品の製造過程を反映できる直接的な証拠は、製造行為及び製造業者を認定できる最も有効な根拠であるが、権利者にとって、侵害者の製造現場でその製造侵害行為の証拠を取得することは割に困難である。したがって、通常、被疑侵害製品を購入し、製品又は製品包装に記載されている製造者、製造地、商標等の情報に基づいて、製造行為を確定する。