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専利無効審判手続きにおける「更なる限定」の補正方式

2017年に改正した「専利審査指南」では、専利無効審判手続きで許容する補正方式に対して調整した。調整後、発明専利又は実用新案専利に対する補正は請求の範囲に限られており、請求の範囲に対する具体的な補正方式は、請求項の削除や、技術案の削除や、請求項に対する更なる限定や、明らかなエラーであると規定した(最新の2023版「専利審査指南」ではこの規定を保持した)。

その中、請求項に対する「更なる限定」が実務上の難点になった。その理由は、審査基準では「更なる限定」に対して「請求項にその他の請求項に記載された一つ又は複数の技術特徴を追加して、保護範囲を縮小することである」と簡単に解釈したからである。

但し、この解釈に対する理解は千差万別で、例えば、独立請求項を補正しない状況で、従属請求項のみに対して更なる限定を行う場合、独立請求項に対して更なる限定を行うと共に、元の従属請求項を独立請求項に補正する場合、同一の請求項に対して異なる特徴で更なる限定を行うことで2つ又は複数の請求項を作る場合などでは、無効審判段階で許容されるべきであるか否かの問題が存在する。

2024年2月23日、最高人民法院は「最高人民法院知識産権法廷裁判要旨要点(2023)」(以下、「裁判要旨要点(2023)」と称する)を発布し、その中で、専利無効審判手続きにおける請求項に対する「更なる限定」の補正方式に対して指導的な意見を示した。

本月のニュースレターでは、かかる判例を挙げながらその指導的な意見に対して説明する。


1.独立請求項を補正しない状況で、従属請求項のみに対して更なる限定を行う場合(【案号】(2021)最高法知行終548号)

第34493号無効審判審査決定に対して、最高人民法院知識産権法廷は二審判決を取り消した。その理由は、「国家知識産権局が、「独立請求項を補正しなく、従属請求項のみを補正した」理由で専利権者の補正請求を受け入れないことは、法律的な根拠がない」と認定した。また、2017年に改正した専利審査基準では、専利権者が更なる限定の補正方式を採用する場合、必ず独立請求項に対して限定すべきであるとの規定がない、と提示した。

「裁判要旨要点(2023)」では、上記の判例に対して以下の裁判要点を示した。

専利権確認の手続きにおいて、当事者が、専利権者が従属請求項のみを補正し、独立請求項を補正しない補正方式は受け入れるべきではない、と主張する場合、人民法院は支持しない。

言い換えれば、専利無効審判手続きにおいて、専利権者は、従属請求項のみ補正し、独立請求項を補正しないことができる。


2.独立請求項に対して更なる限定を行うと共に、元の従属請求項を独立請求項に補正する場合(【案号】(2021)最高法知行終556号)

第40531号無効審判決定にかかる案件において、専利権者は以下のような補正を行った。

注:上記のA 、B、Cなどの英語文字は、技術特徴を現す。

このような補正に対し、国家知識産権局の無効審判合議体は受け入れなかった。合議体は、補正後の請求項1は元の請求項2、4、5を元の請求項1と合併して得られ、補正後の請求項2は元の請求項3を元の独立請求項1と合併して得られたと認定した。すなわち、この補正において、同一の請求項(元の請求項1)にそれぞれ異なる技術特徴を盛り込んで、同時に複数の新しい独立請求項(新請求項1、2)を作ったと認定した。しかし、元の請求項1は更なる限定を行う補正を通じて、既に技術特徴が増加して保護範囲が縮小した新請求項1になり、元の請求項1は既に無くなったため、新請求項2の補正は受け入れられない、と判断した。

すなわち、合議体は、独立請求項に対して更なる限定を行うと共に、元の従属請求項を独立請求項に補正する場合、受け入れなかった。

この問題に対し、最高人民法院知識産権法廷は二審判決を行い、最終的に第40531号無効審判決定を取り消した。最高人民法院は、新請求項2と元の請求項3の実質的な内容と保護範囲は完全に一致するため、補正後の請求項2は元の請求項3であり、元の請求項1と3を合併して得られたものではない。新請求項2は当然審査対象となり、いわゆる補正を通じたとして受け入れない問題ではない。

「裁判要旨要点(2023)」では、上記の判例に対して以下の裁判要点を示した。

専利権確認の手続きにおいて、ある請求項に対する補正が「更なる限定」であるか否かの審査は、単に、補正後の請求項が補正前の請求項の全ての技術特徴を完全に含んでいるか、及び補正後の請求項は補正前の請求に比べ技術特徴が増加し、かつ増加した技術特徴が元の請求の範囲の他の請求項に記載されているかを判断基準にするべきである。また、専利権確認の手続きにおいて、請求項に対する「更なる限定」の補正は、無効審判理由に対応するために行う補正に限られ、無効審判理由を解消するための名義で、実は請求項を改めて作る行為は受け入れない。

上記の事例において、請求項2、4、5を請求項1に盛り込むことは「更なる限定」に属する。このような状況で、元の請求項3を独立請求項に補正することは、請求項を改めて作ることではなく、このような補正は受け入れるべきである。


3.同一の請求項に対して異なる特徴で更なる限定を行うことで2つ又は複数の請求項を作る場合(【案号】(2021)最高法知行終556号)

第40531号無効審判決定にかかる案件において、以下のような状況もある。

注:上記のA 、B、Cなどの英語文字は、ある技術特徴を現す。

この補正に対し、国家知識産権局の無効審判合議体は、補正後の請求項4を受け入れなかった。最高人民法院の知識産権法廷は二審判決において無効審判合議体の決定を支持した。その理由は、請求項7は請求項6に盛り込まれ、請求項6で引用した請求項1も請求項2、4、5を盛り込むことで更なる限定を行って、元の請求項6を切り替わる新しい請求項3が既に得られた。しかし、新しい独立請求項4の技術案は元の請求の範囲に記載されておらず、新しい独立請求項4を許容する場合、改めて請求項を作ることに相当するため、無効審判理由に対応するために行う補正に限られるとの要求に合致しない。

言い換えれば、通常、同一の請求項に基づいて2つ又は複数の、技術案が登録公告された請求の範囲に記載されていない請求項を作ってはいけない(独立請求項又は従属請求項に限らない)。

補足説明

上記の案例は、従属請求項の全ての技術特徴をその他の請求項に盛り込む場合のみを挙げたが、実は、「更なる限定」は、その他の独立請求項又は従属請求項の一部技術特徴を補正しようとする独立請求項又は従属請求項に盛り込む場合も含む。