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均等侵害の判断で背景技術と発明目的に対する考量

はじめに

均等侵害は、被疑侵害技術案と請求項が保護しようとする技術案との間に1つ又は1つ以上の技術的特徴が異なるが、その対応する技術的特徴は、基本的に同一の手段により、基本的に同一の機能を実現し、基本的に同一の効果を奏し、且つ当業者が創造的労働を払わずに想到可能な技術的特徴である場合、被疑侵害製品又は方法は依然として特許権の保護範囲に入ると認定する。以下の案件は、背景技術と発明目的が均等侵害の判断における影響を説明できる判例である。

案件の経緯

仏山市宝索機械製造株式会社(以下、宝索会社と略称する)は、名称が「机械で紙ロールを圧着する封口装置」(出願番号:201621299560.2)である実用新案(以下、係争専利と略称する)の専利権者である。

宝索会社は、仏山市南海区徳昌誉机械製造株式会社(以下、徳昌誉会社と略称する)と河北金博士集団株式会社(以下、金博士株式会社と略称する)が製造、販売、発売した製品(以下、被訴侵害製品と略称する)が係争専利の特許権を侵害したとして、河北省石家荘市中級人民法院に提訴した。

中級人民法院は2021年2月9日に、(2019)冀01知民初第919号民事判決を下ろして、一審判決では、被訴侵害製品は係争専利の請求項1の保護範囲に入っていないと判決した。

宝索会社は上記一審判決に不服して、最高人民法院に控訴した。最高人民法院は2021年8月9日に(2021)最高法知民終民事860号民事判決を下ろして、二審判決では、その控訴を却下し、原判決を維持すると判決した。

係争専利

被訴侵害製品

現場検証を経って、被訴侵害製品の技術的特徴は、二つのクランプ具(即ち、宝索会社が訴えた第1のクランプ具および第2のクランプ具)は、最大距離に離れ、且つ、紙ロールの上方にロールを回転させることで紙ロールを二つのクランプ具に押圧した時に、両クランプ具が同時対向に動き、紙ロールにおける数周の紙を加締めることにより、封口が形成されることになる。つまり、被訴侵害製品の二つのクランプ具は、同時対向に動くものである。

争点

本件二審の争点は、係争専利の技術的特徴1の「紙ロールを第1のクランプ具の端部側に押圧するための押圧機構であり、押圧機構が紙ロールに対する押圧力は、紙ロールの円周面が、第1のクランプ具の端部側に凹陥部と未凹陥部からなる階段状歪みを形成させることが十分である」と、被訴侵害製品の押圧機構「紙ロールを第1のクランプ具と第2のクランプ具の端部側に押圧することにより、紙ロールの円周面が、第1のクランプ具と第2のクランプ具の端部側に、階段状に類似する歪みを形成させる」とは、均等的特徴を構成しているかということである。

二審意見

係争専利の明細書第【0002】、【0003】段落の内容より、係争専利の技術案が解決しようとする技術的問題は、紙ロール机械圧着封口方式に関する改善であり、従来技術の封口品質が高くないという欠陥を解決しようとする。

係争専利の明細書には、開示番号がCN105293196Aである中国特許出願(出願人が徳昌誉会社)で採用したクランプを用いて封口が挟圧される技術案には、封口品質が極めて安定しない欠陥が存在し、該当方法による封口品質は、クランプが紙ロールの円周面に突出した圧着部を押し出すことができるか否かに依存していることが明記されている。

係争専利の目的は、机械で紙ロールを圧着する封口装置を提供して、上記従来技術の欠陥を克服するようになっている。つまり、係争専利の技術案は、該当背景技術に存在する技術欠陥に対して提出したものである。係争専利の明細書の第【0025】段落には、階段状歪みの具体的な形成方式及び位置をさらに説明した。また、押圧機構が適切な押圧力を与えることで、紙ロールの円周面が、第1のクランプ具の端部側に凹陥部と未凹陥部からなる階段状歪みを形成させることが明記されている。よって、係争専利の技術案は、背景技術の二つのクランプの端部側に歪みが形成される技術手段を改善し、押圧機構を用いて付勢することで第1のクランプ具の端部側に階段状歪みを形成させ、即ち、係争専利技術案は、該当背景技術の基で改善されたものである。

被訴侵害製品の押圧機構は、紙ロールを第1のクランプ具の端部側に押圧することにより歪みが形成されるものであり、背景技術の治具の二つのクランプの端部側に歪みが形成される技術手段に比べて、実質的な違いがないが、係争専利の技術的特徴1に比べて、両者の技術手段の違いが明らかである。したがって、被訴侵害製品の該当技術的特徴は、係争専利の上記技術的特徴1に対して、均等的特徴を構成しない。

案件の示唆

当業者が、請求の範囲、明細書及び図面をすべて読んで、係争専利の発明目的の一つが背景技術のある技術的欠陥を克服し、且つ当該背景技術の技術案を排除する形で当該技術的欠陥を克服したと判断した場合、均等侵害を認定することで当該技術的欠陥を含む技術案を専利権の保護範囲に入れることはできない。

そのため、弁理士は、背景技術や発明目的を慎重に作成することが求められ、技術的問題を明らかにしながら、請求の範囲が保護しようとする技術内容を従来技術として記述することを避けることが求められている。