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ハーグ協定(1999年改正協定)は2022年5月5日から中国で発効されます。2022年5月5日から、意匠国際出願時に中国を指定することができ、ハーグ協定を通じて中国で意匠に対する保護を求めることができます。
しかし、意匠国際出願に対する「専利法実施細則」及び「専利審査基準」の改正作業はまだ進行中で、中国国家知識産権局が中国を指定した意匠国際出願に対してどのように審査するかについては、未だにいろいろ疑問が存在します。
以下は、弊所がWIPOウェブ上の情報と中国国家知識産権局が近日(2022年 4月25日)発布した「ハーグ協定加入後のかかる業務処理暫定弁法」(以下、暫定弁法と略称)などの内容を検討して、ハーグ制度を利用して中国に意匠出願する時の注意事項及び存在する問題を纏めて説明します。
一.注意事項
(1) 保護期限及び意匠権発効日について中国専利法第42条によりますと、意匠専利権の保護期限は15年(出願日から起算)です。中国を指定した国際出願に対しは、国際出願日を上記の出願日と見なします(2020年10月27日の専利法実施細則改正意見募集稿によると、このように規定する確率が高い)。
中国国家知識産権局は国際出願に対して審査後、拒絶理由が見つからない場合、WIPOに保護決定を通知し、授権公告(国家公布)を行います。意匠専利権は授権公告日から発効されます(2020年10月27日の専利法実施細則改正意見募集稿によると、このように規定する確率が高い)。
(2)保護期間の区分及び単独指定費用の基準ハーグ協定によりますと、第一回の保護期限は国際出願日から5年で、その後少なくとも二回更新することができ、毎回5年ずつ更新することができると規定しました。中国の意匠権保護期限は15年ですので、中国では二回更新することができます。中国財務部などの部門の通知によりますと、中国を指定した意匠国際出願及びその更新費用は、規定に従って単独指定費用を納付すべきであり、単独指定費の基準は以下のとおりです。
費用は中国国家知識産権局とWIPOが確定したスイスフランに換算して納付し、かかるスイスフランの価格は国家知識産権局のウェブで通知します。
(3)中国香港とマカオに関する注意事項
中国香港とマカオは特別行政区であり、中国政府が発行した声明によりますと、ハーグ協定は香港とマカオには適用しません。よって、中国香港とマカオで意匠保護を求める場合、香港とマカオの地方法律規定に従って手続きを行わなければなりません。
(4)審査遅延の可能性について
暫定弁法の規定によりますと、中国の意匠国際出願は改正後の専利法実施細則及び専利審査基準に基づいて審査します。よって、改正後の専利法実施細則及び専利審査基準が施行される前までは、中国の意匠国際出願は審査を見合わせます。
(5)優先権主張費用と証明書類に関する注意事項
暫定弁法の規定によりますと、優先権を主張する場合、出願人は国際公開日から3ヶ月以内に中国国家知識産権局に優先権費用を納付しなければなりません。国際公開日が専利法実施細則の改正日前(当日を含む)である場合、改正の専利法実施細則の施行日から3ヶ月以内に優先権費用を納付しなければなりません。
暫定弁法の規定によりますと、先願にかかる書類に記載された出願人と後願の出願人が一致しない場合、出願人は国際公開日から3ヶ月以内に中国国家知識産権局にかかる証明書類を提出しなければなりません。
暫定弁法の規定によりますと、国際出願時に先願にかかる書類を提出しなかった場合、国際公開日から3ヶ月以内に中国国家知識産権局に先願にかかる書類を提出しなければなりません。
(6)単一性要件及び分割出願の注意事項
中国は単一性要件に対する審査が厳しく、当面は二つの場合にのみ一出願に複数の設計を含むことができます。一つの場合は組物の意匠であり、もう一つの場合は相似意匠です。
単一性要件を満たさない意匠国際出願に対して、中国国家知識産権局は出願人に自発的に分割出願を提出する機会を提供しました。暫定弁法の規定によりますと、出願人は国際公開日から2二ヶ月以内に自発的に分割出願を提出することができます。
(7)新規性喪失の例外に関する注意事項
暫定弁法の規定によりますと、国際展示会で初めて展示し、又は学術/技術会議で初めて発表したことを理由として新規性喪失の例外を主張する場合、出願人は国際出願段階でその声明を提出しなければならず、かつ国際公開日から2ヶ月以内に中国国家知識産権局にかかる証明書類を提出して説明しなければなりません。
(8)権利変更に関する注意事項
暫定弁法の規定によりますと、意匠国際出願の出願人又は専利権者が権利変更を請求する場合、WIPOでかかる手続きを行うだけでなく、中国国家知識産権局にも証明書類を提出しなければなりません。証明書類が外国語である場合、同時に中国語訳文を添付しなければなりません。
(9)簡要説明に関する注意事項
中国政府が作った声明によりますと、中国を指定した意匠国際出願は簡要説明(brief description)を含まなければなりません。実務経験からみますと、中国国家知識産権局の審査要求を満たすために、簡要説明には少なくとも製品名称、製品用途、設計要点、代表的な図面、各図面の名称、GUIの用途(GUIを含む場合)を記載しなければなりません。
(10)図面に関する注意事項
今までの実務経験からみますと、中国国家知識産権局は意匠国際出願の図面に対してもパリルートの意匠出願と同様に厳しく審査する確率が高いです。例えば、六面図と斜視図に陰影があったり、合理的な説明がなく図面を省略したりなどの問題で審査官に提示されることが多いです。よって、ハーグ協定を通じて中国に出願するとき、図面の問題で拒絶査定になる可能性が高いと思います。
二.問題及び提案
当面、「専利法実施細則」と「専利審査基準」が未だ改正されていないことが一番困る問題で、その施行時期も未だ確定できません。このような状況で、出願に存在する問題及び問題の解消方法について予期することができません。
また、意匠国際出願の最大のメリットは手続きの簡素化であり、拒絶査定が発生しない限りWIPOと連絡するだけでよいはずです。しかし、上述の内容から分かるように、中国を指定した場合、例えば優先権費用の納付や、各種証明書類の提出などは依然として中国国家知識産権局と連絡しなければなりません。一方、中国国家知識産権局は図面や簡要説明及び単一性要件に対する審査が厳しいため、中国国家知識産権局が通常の意匠出願と同様な審査要求で審査する場合、中国を指定した意匠国際出願は拒絶査定通知を受ける確率が高いと思います。よって、中国を指定する場合、手続きの簡素化を実現することが難しい場合もあります。
上記の問題を鑑みて、かかる規則が明らかになる前までは、中国への意匠出願は国際出願を使用せず、今までのようにパリルートで出願することがより便利かも知れません。但し、中国の意匠出願実務経験が豊富で、意匠国際出願で使用した図面や簡要説明が中国の審査要求を満たす場合は、意匠国際出願を利用することもよいと思います。