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2021年5月、最高人民法院は、現在の行政訴訟制度に対し、案件の複雑度、情状の軽重等に基づき、事件を通常手続、簡易手続に明確に区別し処理する為、《行政訴訟手続の簡易分類処理に対する改革意見》(以下「意見」という)を発行した。
北京知的財産裁判所は最初の改革を実行する裁判所として、設立以来、商標権確定行政案件は、受理した各種案件の中で数が最も多い案件であった。商標権確定行政案件の中、一部は事実が明らかで、権利義務関係が明確で、紛争が大きくない案件であるので、「意見」の第二条により簡単な案件として審理可能である。同時に、「意見」の第五条によると、「行政訴訟相手方が和解を要求する場合、または和解を通じて行政紛争の実質的な解決を求める事件の場合、人民法院は、訴訟を提起する前に、当事者が自らまたは第三者を通じて調停するように指導できる」と規定されているので、商標権確定行政案件で「意見」を適用させることは何より適切である。
例えば、一部の案件において、一旦引用商標の権利状態が確定された場合、裁判を即時に進めることができ、且つ結論も当事者の認可を獲得することができる;また一部の案件においては、行政手続きの中で各種の原因により、関連する事実の立証と認定が不足であることで一方の当事者が訴訟を提起したが、事実が明確になったとたん、紛争は迅速に解決できる;また一部の案件は民事訴訟とかかわり、調整が適切である場合、行政訴訟が提起される前の調停手続きを通じて行政訴訟と民事訴訟を同時に解決でき、司法制度の質と効率を大幅に向上させることができる。
実際の裁判に照らして、北京知的財産裁判所は、今年8月以降、商標権確定行政訴訟手続きの簡易分類を模索し、訴訟が提起される前の調停手続きで、上記の問題を含む、商標権確定行政訴訟の裁判結論に影響を与える各種の問題の実質的な解決を達成することだけではなく、調停作業の進展を支援するために訴訟資料の送達も実施し、当事者が和解合意の調停を拒否するか、または合意に達することができず、訴訟を提起しようとする場合、法定要件を満たす案件に対しては、人民法院は、法律に従って迅速に訴訟を登記するよう、審理作業の準備を行っている。
これまで、裁判所は300件を超える商標権確定案件を訴訟前調停手続きに導入し、「行政訴訟前調停手続き通知書」を当事者に発行した。
8月以降、当所も、北京知的財産裁判所から発行された「行政訴訟前調停手続き通知書」を受け、調停準備を行っている段階である。「行政訴訟前調停手続き通知書」は以下の通りである。
本「通知書」は特に、商標拒絶査定不服再審行政訴訟案件で、引用商標の権利状態が確定(即ち、引用商標が三年取消申請で取消された場合、異議(再審)申立、無効請求により無効された場合)された案件に適用するのである。日本と異なり、中国は審査段階及び拒絶査定不服再審段階で「審査保留制度」がなく、また中国商標法では審査期間が法的に規定されているので、引用商標が取消・異議申立て・無効段階にある拒絶査定不服再審案件は行政訴訟段まで入る案件が多数ある。
このような案件は、権利義務関係と事実が明確であり、ただ引用商標の権利状態の確定を待つだけであるため、訴訟を提起して法廷弁論まで行うことは確かに司法資源の無駄だと考える。よって、本「通知書」は紛争解決の柔軟化および司法資源の節約を図り、多元的紛争解決システムの重要な一環として有意義だと思う。但し、現在まで発行された「行政訴訟前調停手続き通知書」を見ると、引用商標の権利状態が確定された商標拒絶査定不服再審行政訴訟案件のみではなく、他の理由(例えば:顕著性、或は欺瞞性を帯び、公衆に商品の品質等の特徴又は産地について誤認を生じさせやすい理由)で拒絶された商標拒絶査定不服再審行政訴訟案件に対しても「行政訴訟前調停手続き通知書」を発行するのは、依然として実質的な問題解決にはなってないとの疑問もある。
但し、法律の発展はいずれも社会背景、司法政策などに密接な関係を持っているので、単なる一度の改革により、全ての問題点を解決できないことも事実である。少なくとも、本「通知書」は商標授権確定行政案件において、著しい進歩であり、注目しなければならない。