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はじめに
専利権侵害の判定において、被疑侵害製品が専利権の保護範囲に入るか否かを判断するだけでなく、製造、販売等の行為の性質についても判断すべきである。現実上、権利侵害者が、専利に係る技術案を構成する部品を別々に販売し、ユーザーが自ら組み立てるようにすることが多い。そのとき、販売者の行為が幇助行為による権利侵害に当たるか否かということは、認定の難点となっている。本文は、最高人民法院が審理した発明専利権侵害紛争事件を分析することにより、別々に販売した部品を簡単に組み合わせたものが係争専利の保護範囲に入った場合の関連行為が幇助行為による権利侵害に当たるか否かを検討した。
事件の紹介
日本のある株式会社(以下、「A社」と略称する)は、専利番号201210218452.8の名称が「歯科用ハンドピース」である発明専利(以下、係争専利という)の専利権者である。
A社は、佛山のある医療機器有限公司(以下、B社と略称する)が製造、販売、許諾販売した「CX235C6-22ハンドピース」及び「C-PUMAモーター」の製品を組み合わせたものが係争専利の請求項1の保護範囲に入ることを見つけた。その中、「CX235C6-22ハンドピース」自体はモーターを有していないが、「C-PUMAモーター」は独立したモーターであり、回転数比の異なる歯科ハンドピースと組み合わせて使用できるものである。A社は、上海のある医療機器有限公司(以下、C社と略称する)を通じて上記二つの製品を購入し、B社の行為が権利侵害に当たると判断した上で、上海知的財産権法院(一審法院)に訴訟を提起した。

一審法院は、2022年3月22日に(2021)滬73知民初433号民事判決を下し、B社の行為が権利侵害に当ると認定し、権利侵害を停止し、A社に損害賠償50万元及び合理的な費用10万元を賠償するよう命じた。B社は、この判決を不服とし、上訴した。
最高人民法院(二審法院)は、2024年3月15日に(2022)最高法知民終1673号民事判決を下した。即ち、上訴を棄却し、原判決を維持した。
二審の争点
本件の二審における主な争点は、B社が「CX235C6-22ハンドピース」と「C-PUMAモーター」を別々に販売したが、両者を組み合わせたものが係争専利の請求項1の保護範囲に入っている場合に、B社の当該行為が幇助行為による権利侵害に当たるか否かということである。
二審の意見
「専利権侵害紛争事件の審理における法律の適用に関する若干の問題に関する最高人民法院の解釈(二)」(以下、司法解釈(二)と略称する)の第21条第1項には、「関連製品が専利の実施に専用される材料、設備、部品、中間物等であることを明らかに知りながら、専利権者の許諾を得ずに生産経営の目的で、専利権侵害行為を実施するように当該製品を他人に提供する場合には、人民法院は、当該提供者の行為が民法典第1169条に規定した他人の権利侵害行為に対する幇助行為に該当するという権利者の主張を支持すべきである」ことが規定されている。
本件において、A社は、B社が製造、販売した「CX235C6-22ハンドピース」及び「C-PUMAモーター」が被疑侵害製品を構成する全ての部品であると主張した。B社は、自社が上記二つの製品を製造したこと、及び、ウェブサイトでそれぞれ許諾販売を行ったことを認めた。しかし、B社は、その製品のマニュアルにおいて、安全警告等の方法により、マニュアルに記載された範囲内で機器を使用するようユーザーに要求しており、かつ、そのモーターが当該ハンドピースと組み合わせて使用できることを宣伝していないと釈明することで、自社が権利侵害に当たらないことを主張した。
これについて、最高人民法院は、審理した上、次のように認定していた。
まず、係争専利の請求項1は、駆動ユニット(権利侵害で訴えられた製品におけるモーターに対応)の具体的な構造について限定しておらず、駆動ユニットが回り止めピンを押圧する役割を果たす必要性を限定しただけである。係争専利の技術案において、ハンドピースは、特定部品に属し、駆動ユニットは、汎用部品に属する。双方が認めた事実によると、歯科ハンドピースは、合適なモーターを駆動ユニットとして有していなければ、正常に使用することができない。
次に、B社は、自社のウェブサイトで「CX235C6-22ハンドピース」を単独で販売していたが、当該ハンドピースにどのようなモーターを組み合わせるかについて特別な提示が無かった。そして、B社は、その状況に関する合理的な説明もしていなかった。ユーザーは、当該ハンドピースを購入した後、係争専利の技術案と同様の技術効果を実現するために、必ずその回転速度に合わせたモーターを探して使用する。
したがって、B社の主張の通り、その製造した「C-PUMAモーター」を「CX235C6-22ハンドピース」に組み合わせて使用できなくても、その「CX235C6-22ハンドピース」を製造、販売する行為は、当該製品が係争専利の実施の専用部品であることを明らかに知りながら、権利侵害行為を実施するようにその製品を他人に提供したものである。司法解釈(二)の第21条第1項の規定に基づき、当該行為は、幇助行為による権利侵害に当たっており、B社は、相応する権利侵害責任を負わなければならない。
以上より、最高人民法院は、B社の上訴請求が成立できないと認定し、一審の原判決を維持した。
事件の啓示
専利権侵害紛争において、直接侵害の認定を回避するために製品を部品に分割して販売する行為について、権利者は、幇助行為による権利侵害を主張することによって自身の権益を保護することができる。しかし、実務上、司法解釈(二)の第21条第1項における「明らかに知りながら」と「専用」に対する判断については、大きな論争が存在している。本件の判決は、その論争について参考を提供した。
「明らかに知りながら」に対する推定:司法の実践において、行為者の「明らかに知りながら」との認定については、事件の事実と結び付けて推定することができる。本件において、権利侵害者は、医療機器を専門的に生産する企業であり、そのウェブサイトでの宣伝、製品情報等は、いずれも関連製品の技術的な用途を知っているか否かを判断するための根拠とすることができる。権利侵害者が製品を分割して販売し、かつ当該販売方式について合理的な解釈を行うことができなかった場合、法院は、その専門分野と宣伝行為を踏まえて、主観的に「明らかに知りながら」ということが存在することを合理的に推定することができる。
「専用」に対する認定:ある部品が「専利の実施に専用される」材料、設備又は部品に属するか否かを判断するために、キーポイントは、当該部品が実質的な非侵害用途を有するか否かにある。当該部品は、専利に係る技術案の実施に用いられる以外に、商業上の他の重要な用途がない場合、権利侵害に用いられる専用品と認定される可能性がある。本件において、「CX235C6-22ハンドピース」は、モーターがなければ動作できない特定の部品であり、その唯一の合理的な商業用途は、モーターと組み合わせて専利に係る完全な技術案を構成するというものである。