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インターネット証拠の公開時間に関する判断事例



前書き

「専利審査指南」の第二部分第三章第2.1.2.1には、インターネット又はその他のオンラインデータベースに存在する資料は出版物の公開に該当すると規定し、第四部分第八章第5.1には、公衆がインターネット情報を閲覧できる最も早い時間を当該インターネット情報の公開時間とし、一般的にインターネット情報の発布時間を基準とすると規定した。

実務上、インターネット上の証拠について、一般的にウェブサイトの運営メカニズム、権威性などを総合的に考慮して、証拠の公開日と真実性を確定する。以下の事例は、中国国家知識産権局が公布した「2024年度専利復審無効典型事例決定要点集」に記載された案件で、この事例を通じてインターネット証拠の合法性と公開時間の認定問題を紹介する。


背景

北京の某科学技術会社(専利権者と略称)は、専利番号201611223250.7の専利権者である(特許出願日は2016年12月27日、授権公告日は2018年6月5日)。

2023年6月16日、北京市の某環境保護科技有限公司(請求人と略称)は、請求項が進歩性がなく、保護範囲が不明瞭であることを理由に、国家知識産権局に無効審判請求を提出し、同時に四つの証拠を提出した。その後、請求人は2023年9月19日に、同様な理由で更に無効審判請求を提出し、14個の証拠を提出した。専利権者は上記2回の無効審判請求に対して意見陳述書を提出し、請求人が提出した無効理由はいずれも成立しないと主張した。

2回目の無効審判請求に対する口頭審理において、専利権者は証拠2(北京の某公証処が発行した公証証書で、その内容はウェブサイトweb.archive.orgにおける気液フィルター製品情報)の公証証書の合法性に対して異議を提出した。web.archive.orgは外国のウェブサイトで、中国公民は当該ウェブサイトにアクセスできなく、特定の方法でアクセスする必要がある。これに対し、請求人は、証拠2は公証処の専用ネットワークを通じてアクセスし、かつアクセス過程も公証しており、証拠2が法定要件を満たしていると主張した。

また、専利権者は証拠2におけるウェブページ上の画像の公開時間について異議を提出し、ウェブサイトweb.archive.orgのウェブページの公開時間はウェブページ上の文字の公開時間のみであり、ウェブページ上の画像は入れ替えることができるため、ウェブページの公開時間に基づいて画像の公開時間を確定することはできないと主張した。この主張を証明するため、専利権者は二つの書類を提出した。専利権者は、書類1(浙江省高級人民法院民事判決書(2022)浙民終117号写し)は、ウェブページのアーカイブ時刻によって、ウェブページ上の画像のアーカイブ時刻を判定することができないことを証明すると主張した。同時に、請求人が主張するように、ウェブサイトweb.archive.orgがアーカイブファイルに対して割り当てたURL[http://web.archive.org/web/[yearinyyyy][dayindd][timecodeinhh:mm:ss]中の[yearinyyyy][dayindd][timecodeinhh:mm:ss]が当該アーカイブファイルのアーカイブ時刻であると認めた場合、当該画像のアーカイブ時刻は対応するウェブページのアーカイブ時刻より早いはずがない。

これに対し、請求人は、書類1はウェブサイトweb.archive.orgからスクレイピングしたウェブページにリンクされた画像(すなわち、この画像は、ウェブページに表示されている画像ではなく、ウェブページにリンクされたファイルである)で、公開時間を認めないと主張した。また、web.archive.orgのウェブページに対して割り当てられたURLおよび当該ウェブページ上の画像に割り当てられたURL中のデータフィールド[yearinyyyy][dayindd][timecodeinhh:mm:ss]が対応するファイルのアーカイブ時間であり、いずれも本特許出願日以前であることから、本特許の従来技術であると主張した。

合議体は審理を経て、上述の発明特許の請求項1-7、11-13に対してを無効宣告し、請求項8-10を基礎として、引き続き本特許権の有効性を維持した。

上記証拠2の合法性について、合議体は、ウェブサイトweb.archive.orgはインターネットアーカイブ(即ち、インターネットアーカイブ館)であり、中国国外の非営利デジタル図書館組織であり、ウェブサイトの内容は現在国内で一般ユーザー端末を通じてアクセスできないが、当該ウェブサイトの公開内容は請求人が既存技術を証明するために用いることに影響を与えず、これは専利法の規定に合致する。証拠2の公証証書によると、上述の公証機関の公証人は公証処専用ネットワークを通じて当該ウェブサイトにアクセスし、関連内容のスクリーンショットを保存した。公証法第三十六条の規定によると、公証を経た民事法律行為、法的意義のある事実及び文書は、事実認定の根拠としなければならない。合議体は、証拠2の公証証書は形式的に明らかな欠陥が存在せず、公証証書に記載された公証過程から見ると、その公証行為は合法的であり、専利権者が当該公証を覆すに十分な証拠を提出しておらず、当該公証証書も公証機関によって取り消され又は訂正されていないため、証拠2の合法性及び真実性を認めていると判断した。

証拠2の公開時間の認定について、合議体は、web.archive.orgサイトはアーカイブされたウェブページファイルごとにURLアドレスを割り当て、ウェブページのアーカイブ時間を記載しているが、そのウェブページ内の画像などの要素はそれぞれ複数回アーカイブでき、対応する画像などの要素のアーカイブ時間をそれぞれ記載しているため、web.archive.orgサイトが収録しているウェブページとそこに含まれる画像などの要素のアーカイブ時間が必ずしも一致しないと判断した。また、書類1で認定されたURLアドレスの中の[yearinyyyy][dayindd] [timecodeinhh:mm:ss]がアーカイブファイルの具体的なアーカイブ時刻であることや、証拠2が公証過程で示したアーカイブ時刻から、合議体は証拠2のweb.archive.orgサイトがアーカイブファイルに対して割り当てたURLアドレスの中の[yearinyyyy][dayindd][timecodeinhh:mm:ss]がアーカイブファイルの具体的なアーカイブ時刻を示していることを認めた。その上で、合議体は、archive.orgウェブサイトが各アーカイブファイルにURLアドレスを割り当てるメカニズムの一致性に基づき、アーカイブされたウェブページのURLとウェブページに表示される画像のURLは同じURLアドレス命名規則とフォーマットを採用すべきであることから、請求人の画像のURLに体現したデータフィールドが当該画像のアーカイブ時刻である主張は一般認知に合致すると認定した。専利権者が提起した「画像のアーカイブ時間は、そのウェブページのアーカイブ時間より早いはずがない」という疑問について、合議体は、上記の時間はウェブページ及びそのウェブページ上に表示された画像のアーカイブ時間であり、ウェブページ及びそのウェブページ上の画像の生成時間ではなく、当該ウェブページのアーカイブメカニズムによれば、ウェブページ中の要素(画像、動画等)が何度もアーカイブされる場合があるため、ウェブページのアーカイブ時間とそのウェブページ上の画像のアーカイブ時間とは一致しない場合があり、ウェブページの正常なアーカイブロジックに合致すると判断した。


焦点

本件の焦点は、(1)証拠2の合法性、すなわち、公証処専用ネットワークを通じて外国のウェブサイトにアクセスして形成された公証証拠が法定の要求に合致しているか否かにある、(2)証拠2の公開時間の認定、すなわち、ウェブページの文字の公開時間が画像の公開時間と同等であるか否か、にある。

焦点(1)について、合議体は、公証処が法定証明機関としてその専用ネットワークを介して外国のウェブサイトにアクセスする行為が「公証法」の規定に合致し、かつ手続の瑕疵がなく、また、専利権者は公証過程に偽造又は改ざんが存在することを証明する証拠を提供しなかったため、公証内容が真実かつ有効であると推定した。また、web.archive.orgのウェブサイトは外国のウェブサイトであるにもかかわらず、公証によって取得された証拠は、特許審査ガイドラインの「国内の公共ルートから取得」に関する例外条件を満たしている。

焦点(2)について、合議体は、インターネットアーカイブのアーカイブメカニズムは、画像とウェブページテキストのアーカイブ時間が一致しない可能性があることを示しているが、画像URLの命名規則(タイムスタンプなど)は系統的であり、業界慣例に合致している。また、「専利法」第22条によると、請求人はURLタイムスタンプを通じて初歩的な立証を完了しており、専利権者は反する証拠を提出しなかったため、合議体は請求人の主張を採用した。


コメント

出願人及び専利権者の立場:

明細書の作成と出願において、対象技術分野のインターネット公開情報を全面的に検索し、従来技術による新規性の喪失を回避する必要がある。特に非特許文献の検索については、海外や業界内の有名なウェブサイトにおける検索を重視すべきである。

無効手続において、請求人からの証拠の公開時間や真実性を疑う場合、具体的な技術的証拠(例えば、ウェブサイトのバックグラウンドログ、第三者鑑定報告書)を提供する必要があり、抽象的な理論や過去の判例だけに頼らないことが効果的である。域外証拠の公証の合法性を疑う際には、公証機関の操作手続きに重点的に注目すべきであり、技術的実行可能性の角度から疑問を提起すべきであり、「海外ウェブサイト」だけを理由に証拠の効力を否定することは避けた方がよい。

無効請求人の立場:

インターネット証拠を使用する必要がある場合、タイムスタンプ記録のあるウェブサイト(例えばInternet Archive、Wayback Machine)を優先的に選択して証拠を取得し、公証機関で公証を行い、URL構造と時間フィールドをロックする必要がある。編集可能なウェブページについては、専利権者の主張に対応するため、編集履歴をさらに公証し、ウェブページが修正される可能性を排除する必要がある。無効手続きでは、ウェブページ全体と要素(例えば画像、リンク)の公開時間を区別し、「ウェブページの公開時間がすべての内容の公開時間である」と一般的に主張することを避ける必要がある。