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はじめに
新規性喪失の例外について、各国で関連規定があるが、中国の規定は比較的厳しく、提出すべき証拠も煩雑であるため、中国で新規性喪失の例外に関する質問をよく受ける。今回のNewsletterでは、新規性喪失の例外に関する無効決定を例に、中国の「新規性喪失の例外」に関する規定とその適用を紹介する。
法令及び適用状況
新規性喪失の例外について、中国専利法第二十四条には、専利を出願する発明創造が出願日前の6ヶ月以内に、次に揚げる事由の1つに該当する場合は、新規性を喪失しないものとする、と規定されている。
(一)国に緊急事態又は非常事態が発生した場合に、公共利益の目的で初めて公開した場合、
(二)中国政府が主催又は承認した国際展覧会で初めて展示した場合、
(三)所定の学術会議又は技術会議で初めて発表した場合、
(四)他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏洩した場合。
上記第(一)項の規定は、2021年6月1日から施行された新専利法に新たに追加された条項である。新型コロナ時期おいて、「新型コロナウイルス感染肺炎を治療する漢方薬複方及びその応用」という名称の発明専利の処方箋が臨床救急治療において使用範囲が最も広く、使用量が最も多く、使用効果も最も良く、感染症との闘いに重要な貢献をした。しかし、このような処方箋が、発明専利出願前に何らかの正当な理由(公衆の健康のため)で公開され、専利権の付与過程が順調ではなかったことがある。これを鑑み、専利法の第4回改正において、新規性喪失の例外に当該条項を加えることで、類似状況のある専利出願は、より適切な条項を利用して自分の権利を守ることができるようにした。しかし、該当条項は非常時にしか適用できず、通常の出願に対して参考価値が高くない。
上記第(二)項に記載されている「中国政府が主催し又は承認する国際展覧会」は、国務院、各部委員会が主催する国際展覧会、又は国務院が認可し、その他機関或いは地方政府が開催する国際展覧会を含む。その中、業界協会が開催する全国的なトレードフェアは、香港、マカオ、台湾などの地域の企業が出展しても、中国政府が主催し又は承認する国際展覧会に属すると認定できない。実務上、この条項は関連証拠を提供することが非常に難しい。業界では、「国際博覧会」のような規模の国際展覧会は、中国政府が主催しまたは承認する国際展覧会であるみなす。
上記第(三)項に記載されている「学術会議又は技術会議」とは、国務院の関連主管部門又は全国的な学術団体組織が開催する学術会議又は技術会議、及び国務院の関連主管部門が認可し、国際組織が開催する学術会議又は技術会議を指す。学術会議又は技術会議は、研究開発成果の発表、討論を主な目的とする会議でなければならない。会議の性質が、市場開拓又は商業貿易活動の促進を主目的とした場合には、当該規定を適用できない。
上記第(四)項に規定された状況は、通常、以下の条件を満たす必要がある。即ち、第一、漏洩内容は直接又は間接的に専利出願人に由来したものでなければならないが、漏洩者は専利出願人本人であってはならない、第二、漏洩行為は専利出願人の同意を得て行ってはいけない。ここで「他人」とは、専利出願人以外のその他の組織又は個人を指し、当該発明創造の発明者を含むことができる。専利出願人が組織である場合、うわべは発明創造内容を漏洩する主体は当該組織の社員であるが、漏洩行為が個人行為ではなく、組織を代表する職務行為である場合には、当該規定は適用されないことを特に注意しなければならない。
専利出願の発明創造に第(二)項又は第(三)項に列記された状況がある場合、出願人は専利出願を提出する際に声明を提出し、かつ出願日より2ヶ月以内に発明創造が既に出展又は発表されたこと、並びに出展日又は発表日に関する証明書類を提出しなければならない。専利出願の発明創造に第(一)項又は第(四)項に列記された状況がある場合、国務院専利行政部門は必要であると判断した際に、指定された期限以内に証明資料を提出するようにする。
実務の現状
前述のように、新規性喪失の例外のうち、第(一)項の規定を適用する機会が非常に少なく、第(二)、(三)項は関連証拠の提供が非常に困難であるため、実務上非常に稀であり、第(四)の規定を適用する状況は偶に発生する。2024年12月25日に国家知的財産権局が公布した無効決定第582773号で、合議体は、専利法第二十四条第四項に規定された条項に基づいて新規性喪失の例外を主張するために満たさなければならない要件を明確にした。この決定は、出願人が今後、上記第(四)項の規定に基づいて「新規性喪失の例外」を主張する方向性を示すことになり、実務上重要な意義を有する。
案件の背景
浙江省の某有限会社と国家知的財産権局、台州省の某有限会社との案件において、浙江省の某有限会社は専利番号CN219364468Uの実用新案の専利権者であり、係争実用新案には一体型ブラケット浮遊式防波堤ブラケットが記載されており、出願日は2023年4月13日である。台州の某有限会社は2024年2月19日に国家知的財産権局に無効宣告請求を提出して、実用新案CN219364468U号の請求項1~8の全部無効宣告を請求し、3つの証拠を提出した。このうち、証拠1は(2024)津和信証経字第1127号公正証書であり、IDが「dyl1y4sgmed68」で名称が「超然」というユーザーが、TikTokで公布した動画のスクリーンショットが記載されている。請求人は、このユーザが2023年3月29日に公布した「新型一体型ブラケット浮遊式防波堤!!目に見える高品質!!!!」というタイトルのTikTok動画のスクリーンショットを、本専利の新規性・進歩性を評価するための従来技術として使用している。
これに対し、専利権者は、以下の内容を主張した。即ち、証拠1に開示された上記技術案の公開日は2023年3月29日であり、出願日前の6ヶ月以内であり、専利法第二十四条第四項に規定されている「他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏洩した場合」に該当し、出願人は、当該状況を知ってから2ヶ月以内に、新規性喪失の例外を要求する意見陳述及び証明資料「一体型防波堤ブラケット製品戦略協力枠組協定」を専利局に提出した。
合議体は、当該証明資料は、単に、浙江省の某有限会社が他人と当該協定を締結したことを証明でき、当該協定には秘密保持に関する条項が明記されているが、当該枠組協定の対象となる具体的な製品の案が記載されていないため、証拠1におけるTikTok動画に開示された案が専利権者のものであることも証明できず、さらにTikTok動画の公開行為が出願人の同意を得ていないことも証明できないと認定した。
したがって、合議体は、係争専利は新規性喪失の例外の要件を満たせず、証拠1は本専利の新規性に影響を与える従来技術を構成すると判断した。
決定ポイント
合議体は、出願人が出願日後に「他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏洩した」ことを自ら知って新規性喪失の例外を主張する時、出願人が提出した証拠は以下の基本要件を満たす必要があり、いずれの一項も欠けてはならないことを提示した。即ち、
(1)時間要件
「新規性喪失の例外」の主張には、時間の制限があって、漏洩行為が出願日前6ヶ月以内(即ち、時間要件1)に発生したことでなければならず、声明提出に関する時間要求もあって、出願人が出願日以降に当該状況を知った場合、当該状況を知った後の2ヶ月以内に新規性喪失の例外を要求する声明(即ち、時間要件2)を国家知的財産局(専利局)に提出し、証明資料を添付しなければならない。
(2)事実要件
「他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏洩した」という具体的な事実を証明するために、専利権者が提供する証拠は次の2つの事実を証明する必要がある。第一、他人が公開した技術案は直接又は間接的に出願人又は発明者に由来するものであり(即ち、事実要件1)、他人が公開した技術案が自ら独立して作成したもの又は第三者から知られたものである場合、出願人又は発明者と関係なく、出願人の同意を得る必要がない。第二、他人の公開行為が出願人の同意を得ず、すなわち出願人の意思に反する行為(即ち、事実要件2)である。この点を証明するために、出願人が事前に係争専利の技術案の漏洩防止に必要な措置を採ったことを証明する証拠を提供しなければならない。例えば、書面又は口頭の方式で秘密保持要求を明示したことの証拠である。
本件について、2つの時間要件、すなわち行為が出願日前の6ヶ月以内に発生し、かつ出願人が状況を知ってから2ヶ月以内に新規性喪失の例外を提出する要件は満たすが、2つの事実要件を満たしていない。『一体型防波堤ブラケット製品戦略協力枠組協定』には秘密保持条項が明記されているが、当該枠組協定の対象となる具体的な製品の案を確定できないため、証拠1におけるTikTok動画に開示された案が専利権者に由来することを証明できず(事実要件1)、さらにTikTok動画の公開行為が出願人の同意を得ていないことを証明できない(事実要件2)。専利権者が提出した証拠は事実要件の要求を満たすことができないため、本専利は新規性喪失の例外に該当しない。
本件の意義
本件の無効決定書において、合議体は専利法第二十四条第(四)項に規定された状況に基づいて新規性喪失の例外を主張するための時間要件と事実要件を明確にした。
提案
出願前に他人と関連協議を締結する時、協議の中で当該協議の対象となる具体的な製品の案を明記することで、他人が発明創造の研究や、技術譲渡又は協力に参加したことを証明でき、これにより他人が公開した情報が専利出願人又は専利権者に由来することを証拠できるとともに、協議の中で秘密保持の関連条項を明記することで、他人と専利出願人又は専利権者との間に明示された秘密保持義務が存在することを証明できる。専利案が開示されたことを知った場合、まず開示された日が出願日前の6ヶ月以内であるか否かを確定し、知った日から2ヶ月以内にできるだけ早く専利局に新規性喪失の例外を要求する意見陳述及び証明資料を提出しなければな