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優先権回復、優先権主張の増加又は修正に関するガイドライン(二)

はじめに

国家知識産権局は、2024年8月23日に、「優先権回復、優先権主張の追加または修正に関するガイドライン」を発表しました。該ガイドラインには、制度の背景、適用条件、手続きの流れ、典型例などの具体的な内容が紹介されて、出願人の専利出願関連手続きの品質の向上を目標としました。今月は、このガイドラインにおける優先権主張の追加及び修正に関する制度について説明します。


一、優先権主張の増加又は修正制度

専利法第29条の規定により、出願人は発明又は実用新案専利の最初出願日から12ヶ月以内に優先権を主張することができます。

『専利法実施細則』(以下、細則という)第三十七条の規定に基づき、発明又は実用新案(意匠を除く)の専利出願人が優先権を主張した場合、優先権日から16ヶ月以内又は出願日から4ヶ月以内に、願書に優先権主張の追加又は修正を請求することができます。

また、細則第三十七条の規定は、パリ条約ルートを通じて中国国家知識産権局に提出した発明及び実用新案の出願にのみ適用されます。PCTルートを通じて中国に移行する発明及び実用新案出願の優先権主張の増加又は修正の有無は、国際段階の審査結果に準じます。


二、優先権主張の増加又は修正制度の意義

優先権主張の増加又は修正制度は、実は優先権主張の記入誤りに対する救済制度であります。優先権回復制度とは異なり、優先権主張の増加又は修正制度は、『専利法』第29条に規定された優先権期間12ヶ月以内に提出された発明又は実用新案の出願を対象とします。

すなわち、12ヶ月の優先権期間内に発明又は実用新案の出願が提出され、かつ、願書に優先権の請求を声明した場合(すなわち、先出願の関連情報が記載されている)、優先権の主張が少なく書かれていたり、又は願書に記入された優先権情報に誤りがあることを見つけた場合、細則第三十七条の規定に基づいて自発的に救済を行うことができます。

なお、発明又は実用新案出願の際に、優先権の請求が声明されていない場合には、優先権主張の増加又は修正制度を利用することができないことに注意すべきであります。

また、優先権主張の増加又は修正制度を利用する場合、元又は修正前の優先権主張の優先権日、或いは増加又は修正後の優先権主張の優先権日に対し、出願日が12ヶ月の優先権期間満了日を超えてはならないことに注意しなければなりません。

したがって、優先権主張の増加又は修正制度を利用する典型的なバターンは、以下のとおりです。

(A)出願時に優先権を請求することを声明したが、優先権主張の一部を漏れ、かつ漏れた優先権主張の優先権日に対し、出願日が12ヶ月の優先権期間を超えていないこと、

(B)出願時に優先権を請求することを声明したが、優先権情報の記入が正しくない(完全に誤った場合を含む)、かつ正しい優先権主張の優先権日に対して、出願日が12ヶ月の優先権期間を超えていない。


三、優先権主張の追加又は修正請求が満たすべき条件

1. 専利出願時に少なくとも1つの優先権を主張すること

優先権主張の追加又は修正において、制度を適用できる前提は、専利出願時に少なくとも1つの優先権が請求されていることであります。したがって、優先権主張の追加を請求する場合、1つの優先権主張から複数の優先権主張への追加を請求することができるが、「優先権主張なし」から「優先権主張あり」への追加を請求することはできません。

2. 所定の期限内に追加又は修正の請求を提出すること

専利出願後、出願人は優先権日から16ヶ月以内又は出願日から4ヶ月以内に、専利局が専利公布の準備を整える前に、『優先権主張の追加又は修正請求書』を提出することができます。「優先権日から16ヶ月以内」又は「出願日から4ヶ月以内」の期限は、後に満了する期限を満了の基準とします。

「優先権日から16ヶ月以内」に対し、追加又は修正された優先権主張により優先権日がより早く変更した場合には、変更した優先権日から16カ月を起算します。

「優先権日から16ヶ月以内」に対し、複数の優先権を主張する場合には、最も早い先行出願の優先権日(最も早い優先権日)を起算日とします。追加又は修正された優先権主張により、最も早い先行出願に変更が生じた場合には、変更された最も早い優先権日から16カ月を起算します。

例1:本出願Cの出願日は2024年1月21日であり、出願時に請求された優先権Aの優先日は2023年1月30日であり、その後に追加される優先権Bの優先日は2023年4月30日である場合、優先権主張の追加を請求する期限は、2024年5月30日(最も早い優先権日から起算して16ヶ月であれば2024年5月30日であり、出願日から起算して4ヶ月であれば2024年5月21日となりますが、後に満了する期限を満了日とします)になります。

例2:本出願Cの出願日は2024年1月21日であり、出願時に請求された優先権Bの優先日は2023年4月30日であり、その後追加される優先権Aの優先日は2023年1月30日である場合、優先権主張の追加を請求する期限は、2024年5月30日(最も早い優先権日から起算して16ヶ月であれば2024年5月30日であり、出願日から起算して4ヶ月であれば2024年5月2日となりますが、後に満了する期限を満了日とします)になります。

例3:本出願Cの出願日は2024年1月21日であり、出願時に請求された優先権Bの優先日は2023年4月30日であり、その後は優先権Aに変更し、優先権Aの優先日は2023年1月30日である場合、優先権主張の修正請求期限は、2024年5月30日(最も早い優先権日から起算して16ヶ月であれば2024年5月30日であり、出願日から起算して4ヶ月であれば2024年5月21日なりますが、後に満了する期限を満了日とします)になります。

なお、優先権主張の追加又は修正請求書が提出された時点で専利局が既に公開準備をしてした場合、優先権主張の追加又は修正請求は承認されないことに注意しなければなりません。したがって、優先権主張を追加又は修正する必要があることを見つけた場合、できるだけ早く請求を提出しなければなりません。

3. 所定の期間内に手数料を納付すること

優先権主張の追加にかかわる場合には、追加請求を提出すると同時に優先権主張料を納付する必要があり、規定の期限内に納付しない場合には、提出していないものとみなします。特に注意しなければならないのは、費用を納付していないか、納付した金額が足りない場合、救済方法がないことです。

4. 所定の期限内に必要な手続き書類を提出すること

必要な場合には、最も早い優先権日から16ヶ月以内に先行出願書類の謄本、優先権譲渡証明書等を提出する必要があります。その要は、優先権を請求する通常の国内出願と同じであります。


四、注意事項

1. 審査と通知

1.1 以下の状況は、請求が提出されておらず、かつ救済できないとみなされることに注意しなければなりません。

(1)出願の提出時に優先権を主張していない、

(2)所定の期限内に請求を提出しなかった場合、

(3)期間が満了して優先権主張費用を納付していない、又は十分に納付していない、

(4)期限内に手続き補正通知書に回答しなかった場合、又は補正後も規定に適合していない場合。

提出していないとみなされる通知書に対して不服がある場合、行政不服審査又は訴訟を提出することができます。

1.2 手続き補正通知書を発行した場合

このような状況はめったに少なく、例えば『優先権主張の追加又は修正請求書』に先行出願の出願日、出願番号及び元受理機関名称のうちの一つ又は二つの内容が明記されておらず、又は誤って記載されており、かつ出願人が既に規定の期限内に先行出願書類の副本を提出している場合には、手続き補正通知書を発行します。

したがって、上記(1)-(4)のような状況が発生しないように注意する必要があります。

2. 優先権主張の追加又は修正を請求する期間を過ぎた場合、細則第6条に基づく権利回復を請求することができるか

優先権主張の追加又は修正を請求する期間は、「不可抗力の事由」が存在する場合にのみ権利回復を請求することができます。

細則第6条には、「不可抗力の事由」又は「その他の正当な理由」により規定期限又は指定期限を過ぎて、権利が喪失した場合、障害が解消された日から2ヶ月以内かつ期限満了日から2ヶ月以内、又は専利庁の通知を受領した日から2ヶ月以内に権利の回復を請求することができると規定されています。

優先権主張の増加又は修正請求の期限を過ぎた場合には、細則第6条第1項の「不可抗力事由」に基づいて権利回復を請求することしかできず、例えば、出願人が台風、洪水、地震、戦争、突発的な重大な感染症等の影響を受け、優先権主張の増加又は修正請求の期限を過ぎた場合には、権利回復を請求することができます。

3. 期限を超えた優先権主張の追加又は期限を超えて回復した優先権主張の修正を請求することができない

細則第三十六条に規定する状況(優先権回復)に該当する場合、細則第三十七条(優先権主張の追加又は修正)の規定は適用しません。すなわち、期限を超えた優先権主張の追加又は期限を超えて回復した優先権主張の修正を請求することはできません。

例4:本出願Cの出願日が2024年2月6日であり、優先権を請求する先行出願Bの優先権日が2023年5月20日であり、出願人が追加を請求する先行出願Aの出願日が2023年2月1日である場合、先行出願Aは期限を超えた優先権であるため、優先権Aの追加を請求することはできません。

例5:本出願Cの出願日が2024年2月6日であり、優先権を請求する先行出願Aの出願日が2023年2月1日であり、出願人が出願後に優先権回復請求書を提出して承認されたが、その後出願人が優先権Aを優先権B(その優先権日が2023年2月10日)に変更することを請求した場合は、認められません。

4.異なる優先権主張に対して、優先権回復及び優先権の増加又は修正をそれぞれ適用することができる

複数の優先権が主張され、かつ優先権回復及び優先権の増加又は修正が適用される対象が互いに異なる場合には、同一の出願に優先権回復及び優先権の増加又は修正の制度を同時に適用することができます。

例6:本出願Cの出願日が2024年2月20日であり、出願時に優先権AとBが主張されており、優先権Aの優先権日が2023年1月12日であり、優先権Bの優先権日が2024年3月12日である場合、優先権Aに対して優先権の回復を請求することができ、優先権Bに対して優先権主張の追加又は修正を請求することができます。