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前書き
均等的特徴とは、記載されている技術特徴と基本的に同様な手段で、基本的に同様な機能を達し、基本的に同様な効果を奏し、かつ、当分野の技術者が被疑侵害行為が発生する際に創造的な労働を必要せずに想到できる特徴を指す。
請求項において数値範囲で限定した技術特徴に対し、従来の侵害判定では、均等論の適用が非常に難しかった。なお、以下の判例(最高人民法院知的財産法廷裁判要旨概要(2023))では均等論を適用したので、本文は以下の判例を通じて、数値範囲特徴に対して均等論を適用する際に考慮すべき要素を紹介する。
案件の紹介
深センA会社は名称が「伸縮ブッシングのロック装置」(専利番号:201310348393.0)の特許(係る専利)の権利者である。
深センA会社は、上海B会社と広州C会社には係る専利製品を製造、販売する侵害行為が存在すると判断して、広州知的財産法院に提訴した。
広州知識産権法院は2021年1月4日に(2019)粤73知民初1399号民事判決を下し、原告のすべての訴訟請求を却下した。深センA会社はその結果に不服し、控訴を提起した。
最高人民法院は2023年4月26日に(2021)最高法知民終985号民事判決を下して、以下のような判定を行った。
1.広州知識産権法院の(2019)粤73知民初1399号民事判決を取り消す。
2.上海B会社は判決の発効日から15日以内に深センA会社に経済損失30万元を賠償し、合理的な費用6188元を支払う。
3.深センA会社の他の訴訟請求を却下し、広州C会社は侵害製品の販売行為しかなく、侵害製品の合法的な入手ルートを証明できたので、賠償責任は負わない。
係る専利
係る専利の審査過程
係る専利の出願当初の請求の範囲において、「位置限定部の位置限定平面の横幅Lは環状クリップ4の内径の0.5‐0.8倍である」との数値範囲特徴は請求項2に限定されていたが、第一回拒絶理由通知書に対応する際に、請求項1に追加した。明細書の記載によると、当該数値範囲特徴がもたらす技術効果は挿入管の相対的な回転を制限することである。出願人は、この点に基づいて進歩性の反論を行った。
しかし、審査官は、当該数値範囲特徴は当業者が部品の硬度、位置限定の要求などに基づいて容易に想到できるものであると認定し、数値範囲特徴を追加しても進歩性を有さないと認定した。
その後、出願人は、請求項1において、「前記位置限定部9の背面の弧形面は前記ブッシング7の円形内壁面に貼り合わせられる」を追加して、特許権を取得した。
争議点
裁判の二審における唯一な争点は、係る専利が限定した数値範囲特徴は「位置限定部の位置限定平面の横幅Lは環状クリップ4の内径の0.5‐0.8倍である」であるが、被疑侵害製品の対応するLは環状クリップの内径の0.45倍であって、両者が均等であるか否かである。
二審の認定
特許又は実用新案において、数値又は連続変化する数値範囲で限定した技術特徴に対し、均等論の適用を絶対的に排除することは妥当ではない。すなわち、当業者が請求項や明細書及び図面を読んで、当該技術案が数値又は数値範囲の技術特徴に対する限定作用を特に強調したと認定する場合を除き、依然として通常技術者の立場に立って、数値限定の技術特徴が全体の技術案において果たす作用に比べて、係る数値の差異が実質的な影響を及ぼすか否かを総合的に判断して、均等論の適用を考慮すべきである。
同時に、専利権は公示性を有し、社会公衆利益を保証するために、数値又は数値範囲で限定した技術特徴に対して、均等論を適用することを厳しく制限するべきである。数値又は数値範囲に対する差異が、当分野の技術者に対して明らかに基本的に同様な技術手段に属し、実現した技術機能と達した技術効果も実質的に同様である場合、技術分野、発明の種類、請求項の補正内容などのかかる要素を総合的に考慮したうえで、均等論の適用が社会公衆の請求の保護範囲に対する合理的な期待に違反しなく、また専利権の利益を公平的に保護できる場合、均等技術特徴であると認定するべきである。
本案において、専利審査過程からわかるように、争議の技術特徴「位置限定部の位置限定平面の横幅Lは環状クリップ4の内径の0.5‐0.8倍である」は本発明の発明点ではない。係る専利が特許を取った理由は、第四回拒絶理由通知書に対応して、請求項1に「前記位置限定部9の背面の弧形面は前記ブッシング7の円形内壁面に貼り合わせられる」を追加したからである。
このような状況で、係る専利の技術案の上記の数値範囲特徴に対して均等論の適用を完全に排除することは妥当ではない。
本案の明細書【0011】段落に「位置限定平面の横幅は、挿入管の相対的な回転を制限するために、環状クリップの内径の0.5倍以上が再優先である」と記載されている。この記載から、当業者は、上記の数値範囲が専利技術案で果たす作用は挿入管の安定性を保証するためであることが分かる。よって、同一の技術問題を解決できる、限定した数値範囲内と特に近接する数値は、均等の技術特徴として認定できる可能性がある。被疑侵害製品と係る専利を比べると、数値比例の差異は0.05で、差異の範囲は10%以内にあり、自転車分野の技術者に対して、両
者が採用した技術手段は基本的に同様で、実現した機能と達した効果も実質的に同様であるため、両者は均等的な技術特徴である。
以上のように、被疑侵害製品は係る専利の請求項1に記載されたすべての技術特徴と同様又は均等の技術特徴を有し、係る専利権の保護範囲に入る。
纏め
本判例において、数値範囲特徴に対して均等論の適用を認定する際に、以下のような要素を考慮した。
A、係る専利は当該数値範囲特徴に基づいて登録されたことではない。つまり、当該数値範囲特徴は係る専利の発明点ではない。
B、当分野(自転車分野)において、当該数値の差異は小さい差異に過ぎなく、機能と効果に実質的な影響を及ぼさない。
以上のように、厳しい制限はあるが、技術分野、発明種類、請求項の補正内容などの係る要素を総合的に考慮したうえで、均等論の適用が社会公衆の請求項の保護範囲に対する合理的な期待に違反しなく、また専利権の利益を公平的に保護できる場合、数値又は数値範囲で限定した技術特徴に対して均等的技術特徴であると認定することができる。