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一.概要
数多い国の特許制度には本国で完成した発明を外国へ出願するとき、審査を行う制度があります。米国を例としますと、米国で完成した発明を米国以外の国に出願するとき、「Foreign Filing License」を取得しなければなりません。中国にも類似する制度があり、以下は中国の「Foreign Filing License」制度について紹介します。
二.法律根拠
中国専利法第20条第1項には、「いずれの組織又は個人が中国で完成した発明又は実用新案を外国へ出願するとき、事前に国務院専利行政部門に報告して秘密審査を受けなければならない」と規定されています。
専利法実施細則第8条には、「専利法第20条に規定されている「中国で完成した発明又は実用新案」とは、技術案の実質的な内容が中国境内で完成された発明又は実用新案である」と規定されています。
なお、中国で完成された技術案でさえあれば、完成した人が中国人であろうか、外国人であろうかに関わらず、或いは中国の個人又は会社が出願の権利をもっているか、外国個人又は会社が出願の権利をもっているかに関わらず、外国へ出願する前に、中国国家知識産権局(CNIPA)に秘密審査請求を提出しなければなりません。審査官の審査を受けて、国家安全又は重大利益に 関わらないと認定された場合にのみ、外国へ出願を提出することができます。
三.その影響
専利法第20条第1項の主旨は、国家安全又は重大利益を守り、機密的な発明創造が外国へ出願されることで公開されることを防ぐためです。よって、本規定を違反した場合、不利な結果をもたらします。
専利法第20条第4項には、秘密審査を受けずに外国へ出願した発明創造は、中国では専利権を付与しないと規定しました。また、専利法実施細則第53条と専利法実施細則第65条第2項には、専利法第20条1項の規定を違反した出願は、拒絶査定又は無効 理由になると規定しました。
四.救済措置
当面の制度によりますと、秘密審査を受けずに外国へ出願した場合、救済 措置はありません。
五.秘密審査について
秘密審査は以下の三つのルートがあります。
※専利法実施細則第9条には請求の提出日から4ヶ月以内に秘密審査の初歩的意見を発送すると規定したものの、実務的には秘密審査は非常に速い。
六.実務における難点
上記のように、秘密審査について法律根拠とその影響が規定されているものの、当面は、専利法第20条第1項(秘密審査)に対して実質的な判断を行った判例がありません。よって、第20条第1項に対する違反判断基準が、実務中の難点になっています。
弊所の調査によりますと、専利法第20条第1項(秘密審査)の規定違反に関わる無効決定は10件ありますが、1件も第20条第1項の規定違反で無効された案件がありません。これらの無効決定から見ますと、判断基準は以下の2点あります。
1) 外国出願の技術案と中国専利の保護する技術案の関連性を証明すること(技術的関連性)。
2) 技術案の実質的な内容が中国境内で完成したことを証明すること(実質的な内容の完成地)。
無効審判決定第36591号において、合議体は、「中国専利と米国専利は内容が基本的に同様であるが、発明者の国籍が中国であることでその技術案の実質的な内容が中国境内で完成されたと立証できない」と認定しました。
無効審判決定第38982号において、合議体は、「無効審判請求人が提出した証拠1は、専利権者が他の訴訟で米国基礎出願の内容に関わるC路線とD路線は中国境内で完成されたと認めたことを立証できるが、証拠1にはC路線とD路線が特定できる具体的な技術案が記載されていないため、C路線とD路線が中国出願の請求の範囲に対応することを立証できなく、証拠1に基づいて中国出願の実質的な内容が中国境内で完成されたことを立証できない」と判断しました。
以上のように、技術的関連性については、外国専利と中国専利を対比することで容易に判断することができます。しかし、実質的な内容の完成地については、大多数の無効審判請求人は発明者の住所が中国境内であることから中国専利の実質的な内容が中国境内で完成されたと推断しますが、このような結論が合議体に認められた案件は一例もありません。当面の無効決定からみますと、実質的な内容が中国境内で完成されたことに対する立証責任は無効審判請求人にありますが、実情から判断しますと、この立証は非常に難しいことになります。
七.提案
1)専利法第20条第1項の規定に違反しないため、具体的な状況に基づいて管理しなければなりません。例えば、勤務先が中国である社員、または中国で出張する社員(国籍に関わらず)が提出し又は参加した発明に対して、上述した三つのルートのいずれか一つに基づいて秘密審査を請求することが考えられます。
2)既に秘密審査請求無しで提出した案件について、上述したリスクがあるとしても、当面の案例から見て実際に無効宣告される可能性は低いため、出願人又は専利権者は慌てる必要がありません。