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懲罰性賠償の判例の紹介

中国の知的財産司法保護の実践の中、「権利行使の周期が長い」、「立証が難しい」、「賠償金が低い」の問題は、実務界を困らせる重要な問題でありました。近年は、知的財産に対する保護力を向上し、ビジネス環境を改善するため、懲罰性賠償制度を積極的に導入しました。

例えば、2019年に改正した「不正競争防止法」は競争法分野に懲罰性賠償制度を導入し、2019年に改正した「商標法」は懲罰性賠償の倍数を高め、2021年1月1日から発効した「中華人民共和国民法典」は知的財産の侵害行為に懲罰性賠償を適用する民法根拠を提供し、2021年6月1日から実施される「著作権法」と「専利法」も懲罰性賠償制度を導入し、2021年3月3日付で発布された「最高人民法院による知的財産民事案件を巡る侵害紛争の審理における懲罰性賠償の適用に関する解釈」は懲罰性賠償の適用条件と、故意と情状の深刻性の認定と、賠償基数及び倍数の確定とをさらに明確にしました(「解釈」は、下記の付録をリンクしてご覧ください)。

最近、懲罰性賠償制度の正確な実施を保障するため、最高人民法院より6件の代表判例を発布しました。今回のニュースレターでは、その中の2件を紹介します。

一.小米科技会社等と中山奔腾会社等の商標権侵害及び不正競争紛争事件

【事件のあらまし】

2011年4月、小米科技会社は「小米」商標を登録し、登録商品は携帯電話、テレビ電話などがある。その後、引き続いて

「MI」、「智米」などのシリーズの商標を登録した。2010年以来、小米科技会社と小米通信会社は業界内の複数の全国的な栄誉を獲得し、各メディアも小米科技会社と小米通信会社及び小米携帯電話に対して継続して幅広い宣伝報道を行ってきた。

2011年4月、中山奔腾会社は「小米生活」という商標を出願し、2015年に登録されて、登録商品は炊飯器、給湯器、電機高圧釜などがある。2018年、「小米生活」の登録商標は「不正手段による登録」の理由で無効宣告された。一方、中山奔腾会社が登録した90件以上の商標の中、複数の商標が小米科技会社の「小米」、「智米」の標識と類似し、さらに複数の商標が「百事可乐PAPSIPAPNE」、「盖乐世」、「威猛先生」など の知名ブランドと同様又は類似した。

江蘇省高級人民法院は、ネットショップ商品に対する評論数を商品販売量の参考根拠とすることができると認定した。かかる23軒店舗の販売額は本件の侵害利益の計算範囲に入れることができる。また、1)二審の期間まで、中山奔腾会社は訴えられた商品に対して続いて宣伝、販売を行い、明らかな侵害悪意が存在する。2)中山奔腾会社等は複数の電子商取引や、ネットショップを通じてオンライン販売を行い、ホームページで展示した侵害商品はさまざまで、数も多く、その侵害規模は大きいため、この情状も懲罰額の考量要素とすることができる。3)「小米」商標は著名商標で、高い知名度と好評度と市場の影響力を有している。4)被疑侵害商品は上海市場監督管理局に「不良品」と認定され、一部ユーザーも被疑侵害製品に品質問題があると反映した。中山奔�会社等が実施した被疑侵害行為は小米科技会社と小米通信会社に名義損害を与え、より強く懲罰すべきである。侵害利益を賠償基数とし、三倍の賠償額で計算して、小米科技会社と小米通信会社が主張した5000万元の賠償を全額支持する。

【典型的な異議】

当該判決は懲罰性賠償の要件である「悪意」、「深刻な情状」に対する認定と基数と倍数の確定方法を全面的に説明した。被疑侵害商品の販売特徴を考慮しただけではなく、懲罰倍数を影響するかかる要素も全面的に分析して、侵害の主観的悪意の程度、情状の劣悪な程度、侵害結果の深刻程度に相応する倍数を確定して、懲罰性賠償制度の適用に実践的な案内の役割を果たした。

二.欧普会社と華升会社の商標権侵害紛争事件

【事件のあらまし】

欧普会社は「欧普」の登録商標の権利者で、登録製品はランプ、蛍光灯等がある。華升会社は自分が製造したテーブルランプ、ナイトライト等の製品とかかる宣伝ホームページに標識を使用し、各スーパーやTMALL(通販サイト)等のネットで販 売、許諾販売を行った。華升会社が製造したランプ類製品は不良品として行政機関から懲罰も受けた。

欧普会社は法院に提訴し、華升会社の侵害事実の認定と、懲罰性賠償の適用を請求し、賠償金額と合理的費用300万元を請求した。一審及び二審法院は華升会社が商標侵害を構成しないと判断し、訴訟請求を支持しなかった。広東省高級人民法院は再審を通じ、欧普会社の保護を求める商標は強い顕著性を有し、著名の程度まで至ると認定し、華升会社がランプ類製品で使った標識は欧普会社のかかる商標と類似標識を構成し、容易に混同するため、商標侵害と認定すべきであると判断した。華升会社は同業者として、欧普会社及びその商標が高い知名度と

好評度を有することを知っていながら、かつ商標のランプ類製品の登録が拒絶された状況で、故意に商標を他の種類の製品に登録し、ランプ類製品に使用して、侵害製品を量産、販売し、かつ製品も不良品であった。欧普会社の商標権侵害の主観的悪意は明らかで、情状も深刻で、懲罰性賠償を適用すべきである。賠償基数は商標のライセンス費用、侵害行為の継続時間に基づいて確定して127.75万元ある。また、華升会社の主観的悪意の程度、侵害行為の性質、情状と結果などの要素を総合的に考慮して、賠償額は賠償基数の3倍に確定する。

【典型的な異議】

当該案件の再審判決は知的財産の懲罰性賠償の適用における

「請求に基づく原則」と、「主観的悪意」と、「情状の深刻さ」の規則の境と立証標準を明らかにし、賠償額の「基数」と「倍数」を詳細に計算する方法とルートを提供して、重要な法律適用の指導価値がある。

【まとめ】

今回発布した懲罰性賠償の判例は商標権侵害紛争案件が5 件、技術秘密侵害紛争案件が1件で、専利権侵害に関する判例はありませんでした。しかし、専利権侵害紛争案件に懲罰性賠償を適用する場合、同じく「主観的悪意」と「情状の深刻さ」を立証しなければなりません。但し、専利権侵害紛争において、権利者の立証能力の制限により、「主観的悪意」と「情状の深刻さ」の二つの要素に対する立証は商標権侵害案件よりもっと難しく、これにより賠償の「基数」と「倍数」も非常に確定しにくい。よって、専利権侵害紛争案件に懲罰性賠償を適用しようとすると、権利者の立証能力をもっと向上しなければならなく、司法機関からも立証に有力な補助措置を求めなければならないと思います。